小説 島田荘司

小説 島田荘司の情報ページです。
「御手洗潔の挨拶」島田荘司 1987/10文庫1991/07




島田荘司の珠玉の短編集。
「数字錠」「疾走する死者」「紫電改研究保存会」「ギリシャの犬」という4篇が入っている。

殺された社長の前に存在する数字錠によって作られた密室の謎が横たわっていた。東京という孤独な社会の悲哀を描いた「数字錠」。

ジャズ好きが集まるマンションで貴金属が盗まれる。
しかし、犯人と思われる男はオリンピック級の速さで死ぬために走っていなければいけなかった「疾走する死者」。

会社に紫電改研究保存会会長を名乗る奇妙な男が現れた。男と喫茶店で話をした数日後ピサの斜塔救済委員会からお礼の手紙をもらう。不思議な物語である「紫電改研究保存会」。

誘拐された子供と残された暗号文。
子供の保護者である目の不自由な老婦人とクロのために御手洗潔が立ち上がる「ギリシャの犬」。

これは僕の大好きな短編集の1つです。

「数字錠」はファンの間でも名作と名高いお話です。
これを読めば御手洗と石岡がなぜコーヒーを飲まないのかが分かります。
社会の悲しみが描かれた美しい物語です。


そして、僕が中学の頃夢中になったのは「疾走する死者」で、ジャズがやたらと出てきて音楽好きにはたまりません。
御手洗のギターの早弾きのくだりを読んでいると、聞きたくなること間違いなしの傑作です。
島田さんが音楽好きなのでしょう。御手洗シリーズはちょくちょくこういう話が出てきますが、常に出てくる音楽の表現が秀逸です。
島田さんがCD批評の本を出せばきっと僕は高評価のCDを買いあさってしまうと思います。
もちろんミステリーですので謎と解決もなかなかエキセントリックで面白いです。
本格推理が流行った時によくあった、現場の図や読者への挑戦状もあり、主体的に楽しめるお話です。


このお話に出てくる音楽のCDも紹介しておきます。
「第七銀河の彼方に」と「エアジン」です。「エアジン」は石岡の過去の事件にも関わっており、そのあたりもこの小説を読んだ時に思い出されます。


「エアジン」は今でもよく聞く曲で、聞くたびに御手洗潔を思い出します。

「異邦の騎士」島田荘司 1990/11 改訂版文庫1998/03




「俺」が目を醒ましたのは古いビルの裏手にある小さな公園のベンチの上だった。

何か思い出そうとするが何も思い出せない。住所も仕事も、名前さえ分からない。
完全な記憶喪失だった。

当ても無く彷徨っている「俺」は運命的に一人の若い女と知り合い親密になる。

「俺」は彼女と暮らし、働き始める。

さらにちょっとした偶然から怪しい占星術師「御手洗潔」と出会い、記憶は無くとも生活に張りも出てきた。


しかしそんな平和の中で徐々に思い出していく記憶。

そしてその記憶はとても受け入れることが出来ないような辛いものだった。



本当に「俺」は妻子を殺したのだろうか?





この小説は御手洗潔の初めての事件を扱ったものです。「占星術殺人事件」より前の話になります。

記憶喪失という不可解な事件から始まり、事件の全貌がつかめないまま物語に引き込まれていきます。

そして物語の中に無数に張り巡らされた伏線によって最後にあっと驚く結末が待っています。



島田荘司さんの作品は「御手洗潔」のような個性的な人物が出てくるのも魅力の一つではありますが、同時に社会派というか、弱い人間の生きる苦しみや悲しみが描かれていることも多いような気がします。

そこに島田文学が単なる謎解きで終わらないところがあると思います。

ちなみに僕にとってはこれが御手洗潔のシリーズの最高傑作です。
                   評価    ★★★★★


愛蔵版です。ファンにはたまりません。



ちなみにこの小説の中に出てくるドビュッシーのアラベスクですが、ピーター・フランクルという人は見つかりませんでした。しかし、アラベスクはきれいな曲です。ぜひ聞いてみてください。
僕はベルガマスク組曲が好きです。それ以外にも亜麻色の髪の乙女など、誰しも聞いたことのある曲が入っていて、なおかつピアニストも有名で廉価。
このCDはおすすめです。


さらに、ウェス・モンゴメリーの「エアジン」はこの小説で知って、高校時代よく聞いていましたが、小説に書いているとおり、「信じがたいスウィング感、風が吹きあげるような、そして枯葉を舞いあげるような、その音色」です。


最後はチックコリアの「浪漫の騎士」です。
このCDから僕は一時チックコリアばかり聞いていました。
波のように寄せては返すこの曲の音楽の流れに身を任せてください。あっという間に時間が過ぎます。