小説 楡周平

小説 楡周平の情報ページです。
「フェイク」楡周平 2004/03文庫2006/08




陽一は、特にとりえもなく、三流大学を卒業後、クラブ「クイーン」でボーイとして働いている。
給料も安く、夢も希望もない、そんな生活が、新しいママ、摩耶の登場で一変する。
彼女の送り迎えをすることで少ないとは言えない額の給料を貰い、さらにワインのすり替えという非合法なビジネスに手を染めるようになる。

もともと気が小さい陽一は周りに流されるようにそれらの仕事をこなすが、彼の大学時代からの片想いの相手「さくら」、競輪にはまっている悪友「謙介」が絡み、事態は複雑に絡み合う。

陽一はこの社会の底辺から抜け出せるのか?




なかなか面白い小説ではありましたが、残念ながら楡周平の作品として考えるとそれほど評価は出来ません。

どんでん返しを期待しましたが、それほどのものがなく、テーマは興味をそそるのですから、楡さんならもう少し、掘り下げて作りこめたのではないかと思います。

二極化し、下流社会という言葉が一般化した現在の若者が下流から抜け出そうとし、成長していくところなんかは痛快ですし、ラストまで気持ちよく読めます。

しかし、暇潰しには良いと思いますが、「再生巨流」や「Cの福音」に比べると劣るかな、といった印象でした。

                 評価    ★★☆☆☆




「再生巨流」楡周平  2005/4/21文庫2007/11




主人公吉野は一流企業の物流部からヘッドハントでスバル運輸に来て、30年間がむしゃらに働いてきた。彼はピラニアと陰口されるほど部下に厳しく、それも部下を道具としてしか扱わないことで実績を残してきた。

そんな彼に会社が下した決断は無理難題を押し付けリストラすることだった。
『新規事業開発部部長』これが彼の新しい役職である。彼に課されたノルマは1年間で4億の商売を生み出すこと。部下はリストラ寸前の男一人と事務員一人。

組織から切られた彼に残された道は退職か、成功か。

再生していく企業、人間の物語。


楡周平の小説は浅倉恭介のシリーズが好きでそれ以外は、全く興味を示していなかったのですが、最近青春・推理小説以外にも興味が湧いてきて手にとってみました。

他人を省みずに自分の熱意だけで夢を追う吉野はある意味で有能な男ですが彼に欠けているのは部下を管理し育てる能力です。

上司から捨てられ、社内に味方もいない絶望的な状況の中で吉野はまずは自分の能力でプロジェクトの青写真を描きます。

しかし、彼のプロジェクトの成功は周りの人間の手助け無しには成功しません。それに気がつくことで彼は成長します。
いくつになっても人は学び、成長できるというのが魅力の一つです。

そして彼のプロジェクトは会社だけを儲けさせるものではなく、社会全体を活性化するもので、会社という組織も同時に新しい展開をとげます。
これからの企業のあり方の一つを示しているのではないかと思います。




絶望の中から這い上がっていくサクセスストーリーに浅倉恭介のシリーズとは違った感動があります。楡作品が好きな人はぜひこの新境地を確認してください。

ビジネス小説の最高峰と言えると思います。 
             評価    ★★★★★


「ターゲット」楡周平 1999/10文庫2001/01




朝倉恭介シリーズ第3弾。

アメリカに対するテロ行為が某国家により画策されていた。
標的は在日米軍基地。
最悪のウィルス兵器によるテロを未然に防ぐためCIAは工作員を日本に潜入させる。
工作員として選ばれたのが朝倉恭介だった。

彼は自分がマフィアの一員であることを隠し、CIAの最高レベルの教育を受け、最高レベルの工作員となる。

そしてテロの実行日が近づく中、恭介と北の工作員の息もつかせぬ攻防が始まる。


朝倉恭介…もはや彼はゴルゴ級です。

今回はなんとCIAをも欺き、それでいて最高の成績でCIAの研修を終える。
さすがとしか言いようがありませんが、「Cの福音」「猛禽の宴」を読んできた人なら納得の結果です。

恭介は失敗というものをしないため、安心して読んでいられます。
言いようによっては、驚きなどが少なそうな感じですが、そんなものがなくても十分面白いです。

このシリーズの全てにおける感想ですが、疾走感・ダイナミクスが映画的です。
この「ターゲット」を映画に例えるなら、ミッションインポッシブルの2ってところです。
ジャンルはスパイって言うよりはアクションスパイのような感じですね。


しかし、この作品のようなテロがいつか起こりそうで怖いです。
北とアメリカが怪しくなってきた時には朝倉さんかゴルゴに祈りましょう。
              評価    ★★★★★





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「猛禽の宴―続・Cの福音」楡周平 1997/11文庫2005/7/25




バカンスを楽しむ朝倉恭介に緊急の連絡が入る。

「ファルージオが撃たれた。」

恭介は恩人でもあり、父親のような存在でもあるファルージオのため、組織を乗っ取ろうとするコジマを狩ることを決意する。





前作「Cの福音」では日本を舞台に、コカインの輸入や抗争を描いたものでしたが、今回はニューヨークを舞台に激しい戦いが起こります。

前作以上に疾走感あふれるストーリー展開、戦いの緊張感、そして朝倉恭介のカッコよさが溢れています。(朝倉恭介のカッコよさは前作のレビューに書きましたので、そちらで確認してください。)

前作が日本映画のような緻密なサスペンスだとすればこれはハリウッド映画のようなゴージャスでエンターテイメント性の高いアクションものだと思います。

とはいえ、作りがアバウトって言うわけではありません。
細かい設定や情報については楡さんの作品らしく凝った内容になっています。


人によってどちらが好きかは分かれそうですが、朝倉恭介に惚れた人なら間違いないですし、マフィアやハードボイルドが好きな人なら読んで損はありません。
僕はハードボイルドが好きですが、このシリーズはツボにはまりました。

悪のヒーローの活躍に心が躍ります。

                       評価    ★★★★☆


ハードカバーはこちらです。
「Cの福音」楡周平 1996/01 文庫2005/4/23




主人公朝倉恭平は27歳、身長は180センチ以上の長身。トレーニングによる筋肉質な体、髪はやや長めでゆるくウェーブしており、目はくっきりした二重。

日本人の父が総合商社勤務だったため、生まれはロンドン、日本で小学生時代を過ごしたあと、再びニューヨークへ。

そんな彼の人生が180度変わるのが、高校卒業を間近に控えた18歳のとき。

父親と母親の乗った飛行機が不慮の事故から爆発炎上した。

その結果彼は莫大な賠償と、それに伴う世界の汚さに触れる。


その後予定通りブラウン大学へ進学するが、彼は同時に格闘技、それも実戦的なものを学ぶ。

彼の人生の2度目の転機は大学3年生になったとき。
彼は寮のルームメイトリチャード・ファルージオと友人になる。

実はリチャードの父はマフィアのボスで、リチャードが不慮の事故で死んだ後、恭介は彼の仕事を知る。

恭介は卒業間近となったときに正当防衛で2人の男を殺し、堅気の仕事につくのをやめ、ファルージオのもとで働くことを決意する。



あらすじとしてはこんな感じです。

恭介のカッコよさといったらありません。
容姿、頭脳はもとより、格闘技もできれば英語もぺらぺら。

彼の頭脳が生み出す麻薬取引の新しい方法と、それにまつわる事件がテンポよく語られます。

この小説の素晴らしさは、緊張感でしょうか、事が起こる前の緊張感たっぷりの空白の時間がきっちりと描かれ、いざ事が起こったときにそのスピード感がいやおうもなく増すのです。

手に汗握ること必至です!


これこそがクライムノベルの傑作です。



ところで、あまり悪い奴が成功する話がないのが僕の不満です。
ボニーとクライドのような話よりもこちらの方が僕の好みです。

この作品が映画化されたら良いなぁと思います。恭介は誰がぴったりでしょうか?
                    評価    ★★★★★