小説 奥田英朗

小説 奥田英朗の情報ページです。
「空中ブランコ」奥田英朗 2004/4/24 文庫2008/1/10





伊良部総合病院。
立派な病院の地下にある神経科、そこはひっそりとした場所とは裏腹に、幼稚で、太っていて、注射マニアの医者と露出狂の看護婦、そして奇妙な症状の患者が集まる不思議な場所。

色白で、デブで、気持ち悪い。なのにどこか憎めない伊良部一郎は、むちゃくちゃしているようでつぼを押さえているのか偶然なのか…とにかく患者を治していきます。


イン・ザ・プール」を読んでから、この小説に入りましたが、最初は二番煎じっぽくて期待はずれな感じだったのですが、やっぱり登場人物、テーマ、筋、全てが面白く気がついたら読み終わってました。

この作品ではますます伊良部一郎の変態度合い(超人度合い)が上がってます。
まだイン・ザ・プールの方が医者っぽかったですね。

今回は変態度合いが上がったせいか、前作よりも笑わせてもらいました。
落ち込んでる人はこれを読めば、悩むのが馬鹿馬鹿しくなって気持ちよく眠れると思います。

         評価    ★★★★☆(やっぱり二番煎じの感も否めないため)
「イン・ザ・プール」奥田英朗 2002/05 文庫2006/3/10



伊良部総合病院の地下にある神経科、そこには様々な神経症にかかった患者が訪れます。




イン・ザ・プール…プール依存症にかかった男の楽しい日常。病気も悪くないなって思います。

勃ちっ放し…ストレスでEDどころか勃ちっ放しになる男。男の悲しさに思わず笑ってしまいます。

コンパニオン…女性の自意識がすごい!でもそれ以上に伊良部の変態さにあきれてしまいます。

フレンズ…携帯依存症にかかった高校生のお話。伊良部がかわいそうでちょっと好きになります。

いてもたっても…この病気は僕も分からないでもないので共感を持ちました。家を出た後、ガスの元栓があなたは気になりませんか?



神経科に来る患者を迎えるのは色白で太っていて声が甲高い精神科医の伊良部一郎、もちろん伊良部総合病院の跡取りです。

そして露出狂の看護師マユミちゃん。


患者はみんな、病院選びに失敗したなぁって思う。
でも、この医者よりは自分はましだってなって、医者のファンキーな行動に巻き込まれているうちになんだか治ってしまう。

伊良部ってひょっとして名医なのかもしれないです。

笑いあり笑いありで心も体も暖まる好著です。

                   評価    ★★★★☆


ハードカバーはこちら。
イン・ザ・プール


映画化やドラマ化もされていました。
奥田作品は映画化多いですね。

映画はこちら。結構評判良いみたいです。

「延長戦に入りました」奥田英朗 2002/7 文庫2003/6



この本は小説家の奥田英朗氏のエッセーです。


著者の考えが直接伝わってくるエッセーは、著者の人となりなんかもよく分かり、身近に感じられるようになるので面白いです。


さて、この本は小説を書かれる前に「スポーツ万華鏡」というエッセーを雑誌に書いておられ、それをまとめたものだそうです。

そのため、スポーツや身体を動かすことが中心になっていますが、スポーツの知識が無くても十分楽しめます。


たとえば、「ボブスレーの2番目の選手は何をしているのか」など、言われてみれば気になる話が盛りだくさんで、ついつい読みふけってしまいます。



また、目のつけどころが全然僕なんかとは違っていて野球のバックネット裏とか、ボクシングのリングサイドのオジサンとか、気づかないところに注目しているのがすごく新鮮でした。




このエッセーを読めばスポーツ観戦から日常生活までこれから先2倍も3倍も楽しめそうな気がしてきます。






ところで、僕もこの本の帯を見て知ったのですが、奥田英朗氏はコピーライターなども経験しておられるようです。

それでふと思ったのですが、「東京タワー」のリリーフランキーさんにしても、最近のお笑い芸人さんの本にしても良く売れていますが、一言で相手をその気にさせる仕事をしてきた人が多いように思います。

リリーさんも構成作家やら様々な仕事をされているようですし、もともとがイラストレーターですので、一目で相手を納得させる訓練のようなものを積んでこられたのではないでしょうか?

そういえば島田荘司さんも何かの本のあとがきか何かで、「小説家になる修行は詩を書くことだ」といっておられました。

ひょっとすると小説家になるための1番良い修行は、長い小説を書き上げるよりも、そういった短い文章なのかもしれません。

                        評価    ★★★☆☆
「サウスバウンド(上)(下)」奥田英朗 2005/6/30 文庫2007/8



これは最近映画化された作品です。

確かに映画化も納得できる極上のエンターテイメント作品といえるでしょう。

内容は少々暗いですが、文体が明るく、笑いの要素もあり、内容もドラマティックなため読みやすいです。




さて、あらすじは、平凡(?)に暮らしていたかつての学生闘争の闘士が過去から逃れられず、再び闘う物語です。

子供の視点で描かれ上巻は子供の生活を中心に、闘士であった親に振り回される生活を描いており、下巻に入ると父親の闘いが主な内容になってきます。



父親は理想を求め、闘い、結局挫折した過去を持ち、理想の社会の実現は出来ないと分かっています。

それでも、理不尽なことに対する怒りから、不毛な戦いに身を投じてしまうのです。


僕は彼のそんな姿に心を打たれます。




僕も含めほとんどの人が、不平等で理不尽なことも多い社会の中で、おかしいと思っていても勝てない闘いはしないでしょう。

だから、理想の種類はどうあれ、立ち向かっていく姿には気高い魂を感じさせられずにはいられません。


いわば、現代のドン=キホーテです。

ドン=キホーテは妄想の中で騎士道を求める、風刺に満ちた内容とされていますが、当時、ドン=キホーテを読んだ人は、ひょっとすると今の僕と同じように、勇気付けられたのかもしれない、と思います。
                          評価    ★★★★☆