200712

200712の情報ページです。
「Cの福音」楡周平 1996/01 文庫2005/4/23




主人公朝倉恭平は27歳、身長は180センチ以上の長身。トレーニングによる筋肉質な体、髪はやや長めでゆるくウェーブしており、目はくっきりした二重。

日本人の父が総合商社勤務だったため、生まれはロンドン、日本で小学生時代を過ごしたあと、再びニューヨークへ。

そんな彼の人生が180度変わるのが、高校卒業を間近に控えた18歳のとき。

父親と母親の乗った飛行機が不慮の事故から爆発炎上した。

その結果彼は莫大な賠償と、それに伴う世界の汚さに触れる。


その後予定通りブラウン大学へ進学するが、彼は同時に格闘技、それも実戦的なものを学ぶ。

彼の人生の2度目の転機は大学3年生になったとき。
彼は寮のルームメイトリチャード・ファルージオと友人になる。

実はリチャードの父はマフィアのボスで、リチャードが不慮の事故で死んだ後、恭介は彼の仕事を知る。

恭介は卒業間近となったときに正当防衛で2人の男を殺し、堅気の仕事につくのをやめ、ファルージオのもとで働くことを決意する。



あらすじとしてはこんな感じです。

恭介のカッコよさといったらありません。
容姿、頭脳はもとより、格闘技もできれば英語もぺらぺら。

彼の頭脳が生み出す麻薬取引の新しい方法と、それにまつわる事件がテンポよく語られます。

この小説の素晴らしさは、緊張感でしょうか、事が起こる前の緊張感たっぷりの空白の時間がきっちりと描かれ、いざ事が起こったときにそのスピード感がいやおうもなく増すのです。

手に汗握ること必至です!


これこそがクライムノベルの傑作です。



ところで、あまり悪い奴が成功する話がないのが僕の不満です。
ボニーとクライドのような話よりもこちらの方が僕の好みです。

この作品が映画化されたら良いなぁと思います。恭介は誰がぴったりでしょうか?
                    評価    ★★★★★

「鬼平犯科帳」池波 正太郎 さいとうたかを



テレビドラマや小説でもおなじみ「鬼平」です。

小学生から時代劇ファンの僕の中で、長い間不動の地位を守り続けた「遠山の金さん」を一瞬にして蹴落としたのは小学6年生だったか中学生だったか。

以降チャンピオンとして君臨し続け、いまや時代劇=「鬼平」なのであります。

時代劇ってのは40分くらいになると悪い奴(大体が、お代官、勘定奉行)のところに主人公がカッコよく現れ(もうちょっと早く来ればお由紀ちゃんも助かったのに…)、「出会え出会え」と出てきた素浪人をばっさばっさと切り殺し、で、決め台詞!


うーん予定調和最高!



ってな感じだったのですが鬼平は違う!

物語のポイントがそこには無いのです。
過程を楽しむことが出来るという点がそこにはあるのでした。


ちなみに音楽も時代劇にしてはなかなかカッコいいのを使っていてうならされました。
エンディングで流れる曲がジプシーキングスの名曲「バンボレオ 」をインストゥルメンタルでカバーした「インスピレーション」という曲でした。フラメンコギターの哀愁が子供心にもわかったのでしょう。


このDVDボックスシリーズ本気で買うか悩んでます。


CDはこちらです。

鬼平の曲だけじゃ買うのやだなって人はこの際ジプシーキングスのベスト買いましょう。「インスピレーション」入ってます。ジプシーキングスも聞いてみて損はないですよ。



それでは漫画です。

「さいとうたかを」さんといえばこれまた「ゴルゴ13」とは切っても切れない関係です。

そういえば「さざえさんの秘密」なんかが流行ったときに「ゴルゴ13の秘密 新装版」も出てまして読みました。ゴルゴの持病の治し方知ってますか?知らなければ読んでください。

しかし、さいとうたかをさんの書いているのはゴルゴだけではなく、例えば「サバイバル (1)」これは少年が荒廃した日本で自給しながら父母姉を探す漫画です。

時代劇も結構お得意なのか、鬼平以外にも「仕掛人藤枝梅安 1 (1)」なんかも描いておられます。

ゴルゴもたまに「ひょっとして優しいのかな…?」と思わせるところも無きにしも非ずですが、ゴルゴは「現代史のバイブル」であって人情を売り物にはしません。だからこそカッコいい。

時代劇のたかをさんは人情がほとばしっています。ゴルゴで出せない人情を爆発させ、鬱憤を晴らすかのよう!
ゴルゴで無情に殺しまくって、鬼平で人間って良いなと思わせるのです。

ちなみにドラマの長谷川平蔵(鬼平のことです。鬼の平蔵略して鬼平です。)とこの漫画の長谷川平蔵がダブって見えるのは僕の記憶が変なのでしょうか?あまり違和感が無いので、テレビから入った僕にも読みやすいです。

文庫版の方がカバーがカッコいいので、僕はこちらで集めてます。




最後に小説にも触れておきましょう。

「池波 正太郎」さんの「鬼平犯科帳」が原作ですので、僕も一度読んでみました。

時代小説をあまり読まない僕から見ても良作だと思うのですが、テレビから始まってしまった現代っ子の僕には魅力が感じられませんでした。気が向いたら、じっくり読んでみようとは思います。


「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎 2003/02 文庫2006/02



この小説が僕にとっての初めての伊坂幸太郎でした。

エンターテイメントの傑作です。
この小説はスピード感があり、伏線が見事に張ってあって最後まで目が離せません。
あとがきで作者が90分くらいの映画が好きって書いていましたが、まさにそんな感じです。


世間では村上春樹に似ていると言われているみたいですけど、僕は東野圭吾さんの作品(「ゲームの名は誘拐」など)に結構似てるかな、って思いました。

僕には村上春樹さんの作品に漂う倦怠感や焦燥感が欠けているような気がします。


とはいえ、村上春樹に似ていれば良い、似ていなければ悪いってこともないので、作家「伊坂幸太郎」として見れば、やっぱり良い作家だと思います。




さて、この小説は4人の主人公が銀行強盗をするクライムノベル(犯罪小説)です。

登場人物は、相手の話す嘘を見分けることができる成瀬、演説と理屈をこねるのが得意な響野、スリの天才久遠、正確無比な体内時計を持つ雪子の4人です。



この4人の個性的なキャラクターの掛け合いが微笑ましく、犯罪小説という感じが一切しません。

ちょっと夕ご飯の買い物に、といった感じで強盗しちゃいます。




小説が面白いかどうかは読んでみないと分からないわけですが、最初の数ページで面白いと思える小説と最後まで読んで、面白かったと言える作品があると思います。

この小説は明らかに前者で、読み始めた瞬間からハマってしまうと思います。




少しネタばれなので注意してほしいのですが、奥田英朗さんの「サウスバウンド」にもこの小説にも、えげつない不良が出てくるのですが、彼らが大人からボコられる姿に喜ぶ僕は危ないのでしょうか…?
                  評価    ★★★★☆


ノベルです。


あと映画化もされました。







「イン・ザ・プール」奥田英朗 2002/05 文庫2006/3/10



伊良部総合病院の地下にある神経科、そこには様々な神経症にかかった患者が訪れます。




イン・ザ・プール…プール依存症にかかった男の楽しい日常。病気も悪くないなって思います。

勃ちっ放し…ストレスでEDどころか勃ちっ放しになる男。男の悲しさに思わず笑ってしまいます。

コンパニオン…女性の自意識がすごい!でもそれ以上に伊良部の変態さにあきれてしまいます。

フレンズ…携帯依存症にかかった高校生のお話。伊良部がかわいそうでちょっと好きになります。

いてもたっても…この病気は僕も分からないでもないので共感を持ちました。家を出た後、ガスの元栓があなたは気になりませんか?



神経科に来る患者を迎えるのは色白で太っていて声が甲高い精神科医の伊良部一郎、もちろん伊良部総合病院の跡取りです。

そして露出狂の看護師マユミちゃん。


患者はみんな、病院選びに失敗したなぁって思う。
でも、この医者よりは自分はましだってなって、医者のファンキーな行動に巻き込まれているうちになんだか治ってしまう。

伊良部ってひょっとして名医なのかもしれないです。

笑いあり笑いありで心も体も暖まる好著です。

                   評価    ★★★★☆


ハードカバーはこちら。
イン・ザ・プール


映画化やドラマ化もされていました。
奥田作品は映画化多いですね。

映画はこちら。結構評判良いみたいです。

「大いなる遺産」1998/06



この映画はイギリスの文豪、チャールズ・ディケンズの半自伝的小説を映画化したものです。

僕は小説の方は読んでいません。(イマイチ海外作家の翻訳小説は読みずらいので)



ただ、イーサン・ホークとグィネス・パルトロウが好きなだけでこの映画を借りてみました。



イーサン演じるフィンという男の子が成長していく姿を描いたものなのですが、グィネス演じるエステラと彼女を愛するフィンがすれ違いまくりで、それがたまりません。

もう、エステラが思わせぶりな動きをするのに翻弄され続けるフィンが悲しすぎで、思わず応援しちゃいます。




2人ともハンサム・美人なので、どのシーンも絵になります。
撮り方にも凝っていて、映像がとにかく美しいです。
そしてその映像美をさらに盛り上げる音楽。

一言で評するなら絵画のような作品というのが僕の感想です。

実はデ・ニーロも出てたりしてそのあたりも見ものです。



「僕がこれまで生きてきたことは全部キミのためだ!」だったかな?

一度は言ってみたいものです。



読んでないけどいつかは読みたいと思います。



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「男の隠れ家」 出版 あいであ・らいふ



この雑誌ではたまに書斎特集みたいなのをやっていて、僕が持ってるのは2004年12月号なんですが、様々な作家の「書斎拝見」みたいなことをやってて面白いです。

西村京太郎さんの家の横には記念館があるんだ、とか、阿刀田高さんの書斎は図書館みたいだとか…楽しくって仕方ありません。

好きな作家のおすすめの本紹介なんかもあり、本探しの指標にもなっちゃったりします。


ちなみに以下に挙げておくのは僕の持ってない号なので上記の内容と必ずしも一致しないと思いますが、参考までにどうぞ。


「黒い家」貴志祐介 1997/06 文庫1998/12



この本は僕のこれまで読んだホラー小説のなかでも1位を争う怖い本です。

背筋の冷たくなる小説が読みたいなら間違いなくこれでしょう。




物語は、保険会社に勤める主人公のもとに奇妙な客が現れ、そこから保険金にまつわる事件に巻き込まれていきます。



ジャンルはサイコホラーとでも言うんでしょうか?

とにかく怖い。

高校時代あまりの怖さに布団から出られなくなった覚えがあります。


この小説を読んで思ったことは、怖いのは幽霊やゾンビなんかじゃなく「人の狂気」なんですね。


映画化もされましたが本で満足してしまいましたから、まだ僕は見ていません。

絶対本で読むべき作品だと思います。
                     評価    ★★★★★

ハードカバー
黒い家

「屍鬼」小野不由美 1998/09 文庫2002/01



小野不由美さんはファンタジーや伝奇小説家だと思って敬遠していましたが、高校時代にこの小説と出会って考えを改めました。

僕が読んだのはハードカバーの単行本で、上下巻、優に1000ページ以上ある分厚い本だった覚えがあります。

そしてこの本と出会い、生まれて初めて僕は寝食を忘れるという経験をしました。




あらすじとしては、人口1300人ほどの外界から半分隔絶された寒村を舞台に、謎の死を遂げていく村人と、その謎を解くために奮闘する村の唯一の医者、尾崎敏夫と寺の跡取りであり、小説家でもある室井静信を中心としたホラー小説です。




抜群のボリュームからも分かると思いますが、登場人物の数も、間に入るエピソードも膨大で、話の進み具合が驚くほど遅いです。

単行本だと上巻、文庫だと2巻くらいまでは、忍耐強く頑張ってください。

必ず、報われます。

特に物語後半の息もつかせぬストーリー展開には目を見張るものがあります。

カタストロフィーを肌で感じることが出来るでしょう。





実は最近、懐かしくなって文庫で集めてみましたが、ハードカバーの方が良かったかもしれません。理由は特にありませんが…。



でも、再び読んでみて、恐ろしいのは「人の心」なんだなぁと、やっぱり高校時代と同じ感想を持ちました。
                      評価    ★★★★★
 
 
屍鬼〈2〉 (新潮文庫)
屍鬼〈3〉 (新潮文庫)
屍鬼〈4〉 (新潮文庫)
屍鬼〈5〉 (新潮文庫)



屍鬼〈下〉
「MISSING」本多孝好 1999/06 文庫2001



これはとても不思議な小説です。

ミステリーというにはあまりに叙情的だし、ホラーの要素もあります。
青春といえば青春ですがそこには恋愛も含んでいます。



内容は読んでいる間はどんどん先が読みたくなりますし、飽きさせません。

短編にありがちな、表題作だけが面白いって事もないと思います。

ただ、読後に大きな印象が残らなかったかもしれません。

それでも言葉の選び方や話の構成、アイデアはさすがは「本多孝好」という感じでした。
彼の書く物語は単なる美しい話にとどまりません。

これらのことからこの作品を一言で言えば軽い読み物ということが出来ます。
電車の中や暇つぶしに読むにはぴったりです。ちょっと贅沢かもしれませんが。

でも、僕はこの本が好きです。

「本多孝好」を知らない人も好きな人も楽しめるのではないかと思います。






章とあらすじをあげておきます。

眠りの海…高校教師と女子生徒の恋。最後まで読めないストーリーに引き込まれます。

祈灯…ミステリー要素の強い作品。妹の友人は、自分を「葉山典子」だと思いこんでいる女の子。なぜ彼女がそんなことになったのか?僕はミステリーよりも登場人物や彼らのやり取りに惹かれました。

蝉の証…「僕」が老人ホームの祖母から頼まれたことは1人の老人の素行調査。調査を終えた僕と祖母のやりとりに切なくなります。

瑠璃…「ルコ」という女の子との思い出。夏を感じる青春と愛の物語です。

彼の棲む場所…誰しもが持つ人間の心の醜さを描いています。だからこそ共感できると思います。



                             評価    ★★★★☆

「娼年」石田衣良 2001/07 文庫2004/05




大学生の森中領は大学にも行かず、毎晩バーテンダーのアルバイトをしています。

しかし、そんな彼の退屈な日常は御堂静香との出会いで一変することになります。

御堂静香は男娼を集めた会員制クラブ「パッション」のオーナーで、彼女に見初められた森中領は男娼としての新しい自分を発見し、性について深くのめりこんでいくのです。

この小説はそんな彼の20歳の夏を描いた青春の物語です。



最初から最後まで、ドラマチックに話は進み、ラストも気持ちよく終わるため、読後感はまずまずです。


ただし、性的な話が苦手という人には受け付けないかもしれません。
(もちろん、そんなえげつないことは無いのですが…)





石田衣良さんの作品には、若者が年上の人から新しい世界を教えてもらうという話がいくつかあります。

僕には、この若者が現状を打破し、手探りで新しい世界に飛び込んでいく姿が見ていて清清しく、成長していく姿にわくわくします。

さらにこの作品について言えば、男娼という馴染みのない世界が、読んでいて飽きさせることがないと思います。

一気に最後まで読んでしまいました。
                       評価    ★★★★☆


「夜のピクニック」恩田陸 2004/7/31 文庫2006/09




全校生徒が徹夜で80キロを歩く、高校最後の一大イベント「歩行祭」を舞台に、高校3年生の甲田貴子と西脇融を中心とした高校生たちを描いた青春小説です。



帯の「青春小説の新定番」に惹かれて読んでみましたが、これは面白いです。

本屋大賞受賞も納得できました。



さらに内容を書いてみると甲田貴子と西脇融の二人は他人に言えない秘密の関係があります。

この関係を何とかしたいと思う甲田と、内心気になりながらも、無関心を装う西脇。

さらに、高校3年生という高校最後の年、それぞれが抱える将来や高校生活、恋愛などを80キロを歩きながら語り合います


高校生の会話がとても自然で、気取ったところも、芝居がかったところもないですし、登場する人物もいかにもいそうで、日記を読んでいるような印象でした。




高校生という僕にとっては過ぎ去った時代を思い出させてくれます。

僕が高校生のときにこの本を読んでいたらどういう高校時代を過ごしたかな?と想像してしまう、そんな作品です。

                      評価    ★★★★★
「MOMENT」本多孝好 2002/8 文庫2005/9




「死ぬ前に一つだけ願いがかなう。」

そんな噂が流れる病院で主人公の「僕」は清掃夫のバイトをしています。

そんな「僕」が一度だけ末期患者の老女の願いをかなえたことから、死に直面した人々の願いを聞くようになってしまいます。


FACE…太平洋戦争を戦った老人の願いは当時自分が殺した上官の家族を見守ることだった。
WISH…死と隣り合わせの少女の淡い恋と悲痛な心の叫び。
FIREFLY…都会で生きることの孤独とせつなさ。
MOMENT…家族を残して死ななければいけない男、残された家族のために出来ることは?



この小説は上記の4話からなる短編集です。

将来や生き方が分からない今どきの主人公が死に直面した人々との出会い、別れを通して人間や命、人生を学んでいきます。

特に僕の心に残ったのは「FIREFLY」で、都会の「孤独」に最後はせつなさでホロリときました。


この作品の中で本多孝好さんは、いくらでも美しい話が書けるはずなのに、それを悲しいほどドライに描いています。

しかし、僕にはこの現実的である意味で辛い物語は彼にしか書けないような気がします。

                           評価    ★★★☆☆
「壁画修復師」藤田宜永 1999/7 文庫2001/9



この本は心温まる5話の短編集です。

フランスを舞台にしたアベという日本人の壁画修復師を中心とした物語です。


あまり僕らには馴染みのない職業ですし、短編なんで軽いんだろうと思って読んでみると、アベの過去まで深く突っ込み、また、アベに心を開く人たちの心をじっくりと描写してくれるので、外国人の話だっていう事も忘れて感情移入してしまいます。


アベはフランスの田舎町を転々としながら、教会の壁画を修復する寡黙な男、それでいて、人情味のある彼に町の人たちは自分だけの心にしまっていた感情をアベに吐露します。





五十年目のカルバトス…いがみ合う二人の老人。二人はかつて第2次世界大戦でともに闘った親友でした。二人の過去の行き違いをアベが修復します。

水に流して…田舎で宿を切り盛りするブリジットと手伝いのオリヴィエ、静かに暮らす二人の 生活に、かつて家を飛び出したブリジットの娘ロザリーが帰ってきて…。

生と死のコラール…アベがとある田舎町に呼ばれます。夜中一人教会で仕事をしているとこ ろにオルガニストの青年が入ってきます。休暇で来たという彼は町長の娘 と仲良くなりますが…。

白い河…かつてアベとともに学んだショメルの堕落した姿。アベの過去が明らかになり始めます。

タニアの城…アベの過去をあざ笑うかのように彼の過去とそっくりな状況が目の前に現れます。さらに、日本から20年ぶりに帰国したタニアの息子アレクシス。彼の帰ってきた理由とは…?





藤田宜永さんの本は不倫ばっかりってイメージがあって、ほとんど読んだことがありませんが、久しぶりに感動して泣けた素晴らしい作品だと思います。

                         評価    ★★★★★
「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」1992



毎日読書も良いですが、映画も悪くはありません。


原作は最高なのに映画になると…。

そんな映画も確かにたくさんありますが、たまには大当たりの映画もあります。






これは退役した盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校生チャーリーの心の交流を描いた作品です。

青春映画の傑作といっても良いでしょう。

ファンキーな性格の軍人フランクと真面目な苦学生チャーリー。
フランクの特技は女性の香水の名前を当てること、そしてタンゴを踊ること。

女性を口説くシーンやタンゴを踊るシーンは強烈です!




そして一見頑固で自分勝手なフランクの心の奥を見て、彼に惹かれ、そして人間的な成長をしていくチャーリーと、そんな彼が抱える、彼の未来が消えるほどの大きなトラブルを助けようとするフランク。

ラストのアル・パチーノの演説では涙で字幕が読めません。

アル・パチーノはこの盲目の役でアカデミー賞に輝きました。
素晴らしい演技力です。

そして本作は誰かが死ぬわけでもなく、最後は暖かい気持ちになれます。


最近の映画に不満のある僕はこの映画を推薦します。




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「春の雪」三島由紀夫 1969 文庫1977/7



輪廻の物語「豊饒の海」のシリーズ第1章です。全4章あります。



この作品は侯爵家の子息松枝清顕と伯爵家の令嬢綾倉聡子の恋の物語です。



松枝清顕は容姿端麗で生まれながらの貴族としての雅さも持ち合わせた羨ましい男です。
綾倉聡子もまた美しい女性で、描写を見る限り、似合いのカップルな訳です。

松枝清顕と綾倉聡子は幼馴染であり、自然とお互いを意識するようになっていました。

しかし、清顕は自尊心や周囲への体裁から、一方的に聡子に対してひどい態度をとります。

それでも清顕を一途に想っていた聡子もある時、ついにあきらめ、宮家に嫁ぐことになります。

そのとき初めて清顕は自分の気持ちに気がつき、物語は禁断の愛へと進んでいくのです。



あらすじを見ているとまるで昼ドラのようです(笑)


しかし、昼ドラと違うのは、人物(特に清顕)の心理を深く掘り下げているところではないでしょうか?

実際、好きなら好きで良いじゃないかって事なんですが、読んでいると松枝清顕の行動の理由が分かり、ある程度共感も出来てしまうのです。

それを説得するわけでもなく、自然に読者に感じさせる、そこが三島由紀夫の凄いところだと思います。

納得している自分に気がついたときには本当に鳥肌が立つような気持ちがしました。



切なくも美しい恋の物語ですし、三島由紀夫を怖がらず、じっくり読んでみませんか?
                    
                        評価    ★★★★★

「すべてがFになる」森博嗣 1996/4 文庫1998/12



この本は僕が中学生の頃に読みました。

理系ミステリという触れ書きで、当時盛んだった本格ミステリと呼ばれるトリックに力を入れた推理小説界に新風を巻き起こした作品です。



推理小説なので詳しいあらすじは書きませんが、N大助教授犀川創平とN大の学生西之園萌絵が、天才科学者真賀田四季博士のいる孤島、妃真加島で事件に巻き込まれるというものです。



どの辺が理系なのかというと、とにかく、数学的、理系的な話題が多いことだと思います。

実際初めて読んだときはその内容に新鮮さを覚えました。


しかし、今から考えると、僕が夢中になったのには、会話の面白さ、登場人物の魅力が大きいと思います。

特に犀川助教授や真賀田四季博士の天才性にすごく魅かれ、影響を受けた僕は身の程知らずにも「理系に進もう」と心に決めたのでありました。(後に挫折しました。)


また、恋愛要素も入っており、エンターテイメントとして、しっかりと成り立っています。


著者は現在は辞めていますが、某旧帝大の助教授で、推理小説からエッセーまで多方面で活躍されています。

ちなみにこの「すべてがFになる」はS&Mシリーズの1作目で、これにハマったら是非シリーズ10作すべて読んでみてください。
                      評価    ★★★★☆


冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
笑わない数学者―MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)
詩的私的ジャック (講談社文庫)
封印再度―WHO INSIDE (講談社文庫)
幻惑の死と使途―ILLUSION ACTS LIKE MAGIC (講談社文庫)
夏のレプリカ―REPLACEABLE SUMMER (講談社文庫)
今はもうない―SWITCH BACK (講談社文庫)
数奇にして模型―NUMERICAL MODELS (講談社文庫)
有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER (講談社文庫)
「美女と野球」リリー・フランキー 1998/11 文庫2005/10/5



実をいうと僕はリリー・フランキー氏の「東京タワー」を読んでいません。

僕にとってリリーさんは「美女と野球」のリリーさんなのです。


下ネタばっかりで、ウンコとチンコとセックスの話しかありません。

きっとリリーさんはそんなことばっかり考えて日々生きておられるのだと勝手に思っております。


こんなこと言ってると「東京タワー」を読んで感動した人たちに怒られそうですが、この本を読んでもらえたら、全て理解してもらえるだろうと思います。

ちなみに「東京タワー」を読んで感動した友人に「美女と野球」を貸したところ、リリーさんの人間像にずいぶん悩んでいたのが印象的でした。


とはいえ、このエッセーは素晴らしい出来栄えで、僕は不覚にも電車の中で読んでしまい、公共の場で大笑いし、周りの人からすごく気味悪がられてしまいました。

絶対に公共の場では読まないでください。

間違っても病院なんかで読むとえらいことになりますから。


おうちで暇つぶしに読むには最高です。



他にリリーさんのエッセーは「誰も知らない名言集」、「女子の生きざま」を読みましたが、一番面白かったのは「美女と野球」だと思います。

評価するのがちょっと難しいです。一応下ネタが無理な人には★★☆☆☆とさせていただきますが、下ネタオッケーの人なら★★★★★くらいつけても大丈夫だと思います。

それくらい笑えます。



増量・誰も知らない名言集 (幻冬舎文庫)
女子の生きざま (新潮OH!文庫)
「延長戦に入りました」奥田英朗 2002/7 文庫2003/6



この本は小説家の奥田英朗氏のエッセーです。


著者の考えが直接伝わってくるエッセーは、著者の人となりなんかもよく分かり、身近に感じられるようになるので面白いです。


さて、この本は小説を書かれる前に「スポーツ万華鏡」というエッセーを雑誌に書いておられ、それをまとめたものだそうです。

そのため、スポーツや身体を動かすことが中心になっていますが、スポーツの知識が無くても十分楽しめます。


たとえば、「ボブスレーの2番目の選手は何をしているのか」など、言われてみれば気になる話が盛りだくさんで、ついつい読みふけってしまいます。



また、目のつけどころが全然僕なんかとは違っていて野球のバックネット裏とか、ボクシングのリングサイドのオジサンとか、気づかないところに注目しているのがすごく新鮮でした。




このエッセーを読めばスポーツ観戦から日常生活までこれから先2倍も3倍も楽しめそうな気がしてきます。






ところで、僕もこの本の帯を見て知ったのですが、奥田英朗氏はコピーライターなども経験しておられるようです。

それでふと思ったのですが、「東京タワー」のリリーフランキーさんにしても、最近のお笑い芸人さんの本にしても良く売れていますが、一言で相手をその気にさせる仕事をしてきた人が多いように思います。

リリーさんも構成作家やら様々な仕事をされているようですし、もともとがイラストレーターですので、一目で相手を納得させる訓練のようなものを積んでこられたのではないでしょうか?

そういえば島田荘司さんも何かの本のあとがきか何かで、「小説家になる修行は詩を書くことだ」といっておられました。

ひょっとすると小説家になるための1番良い修行は、長い小説を書き上げるよりも、そういった短い文章なのかもしれません。

                        評価    ★★★☆☆
「サウスバウンド(上)(下)」奥田英朗 2005/6/30 文庫2007/8



これは最近映画化された作品です。

確かに映画化も納得できる極上のエンターテイメント作品といえるでしょう。

内容は少々暗いですが、文体が明るく、笑いの要素もあり、内容もドラマティックなため読みやすいです。




さて、あらすじは、平凡(?)に暮らしていたかつての学生闘争の闘士が過去から逃れられず、再び闘う物語です。

子供の視点で描かれ上巻は子供の生活を中心に、闘士であった親に振り回される生活を描いており、下巻に入ると父親の闘いが主な内容になってきます。



父親は理想を求め、闘い、結局挫折した過去を持ち、理想の社会の実現は出来ないと分かっています。

それでも、理不尽なことに対する怒りから、不毛な戦いに身を投じてしまうのです。


僕は彼のそんな姿に心を打たれます。




僕も含めほとんどの人が、不平等で理不尽なことも多い社会の中で、おかしいと思っていても勝てない闘いはしないでしょう。

だから、理想の種類はどうあれ、立ち向かっていく姿には気高い魂を感じさせられずにはいられません。


いわば、現代のドン=キホーテです。

ドン=キホーテは妄想の中で騎士道を求める、風刺に満ちた内容とされていますが、当時、ドン=キホーテを読んだ人は、ひょっとすると今の僕と同じように、勇気付けられたのかもしれない、と思います。
                          評価    ★★★★☆




一応おすすめ度というか評価を星で表現しています。
もちろん僕の感想ですのであしからず。


★☆☆☆☆ 
ほとんどつけることは無いと思いますが一応。読んで失敗したなって本につけさせてもらいます。
★★☆☆☆ 
好きな人は好きかも。あまりおすすめはできません。専門的な内容の本につけることが多そうです。
★★★☆☆ 
普通に面白いです。
★★★★☆ 
読むことをおすすめします。
★★★★★ 
大満足。みんな是非読んでください。僕にとっての傑作です。

最初は紹介する本が面白かったものばかりなので、あまり悪い評価はつきません。
また、好きな本なのでどちらかというと甘い評価になると思います。
ネタばれを出来るだけ避けるためにあらすじが分かりにくいかもしれませんがご容赦下さい。
「1973年のピンボール」村上春樹 1980/1 文庫2004/11


村上春樹の代表作といえば「ノルウェーの森」を想像する人が多いのではないでしょうか?

しかし、僕はあえてノルウェーを外し、ピンボールから攻めたいと思います。

何故か。

それはこの小説の持っている倦怠感、焦燥感は他の作家、小説に類を見ないものだからです。
何が悲しいのか分からない、何に焦っているのか分からない。ただ、無性にもどかしく、苦しく、そして悲しいのです。

だからこそ、この作品は僕にとって特別な何かになったのです。

20歳のときでもなく30歳になった僕でもなく、25歳の今、この本に出会えた事は幸運だったと思います。ただ、30歳になったときもう一度読んでみたら、自分がどんな感想を持つだろうか、と興味もあります。





さて村上春樹の小説にあらすじを求めるのは野暮なことではありますが、一応言わせていただきますと、「ピンボール台を求める旅」…それだけです。



えっ?それだけ?

それだけなんです。

あとはあなたの思うように、感じるままにストーリーを作ってください。


また、「村上春樹の小説は意味が分からない」と嘆いておられる皆さん、「みんな面白いって言うけど私にはさっぱり」とお悩みの皆さん。

彼の小説の全てに多かれ少なかれ言えることではありますが、内容は意味分からなくてもいいんです。深く考えたい人は考えれば良いですし、雰囲気を楽しみたい人は彼の言葉のチョイスを味わえば良いのです。

僕がある批評を読んで「なるほど」と感じたのは、「友人と作った翻訳事務所に朝出社し、ベルトコンベア式に右から左に翻訳して、夕方五時の仕事帰りにバーによってお気に入りの本を読みながらビールを飲む。そんな生活感のない生活に惹かれた。」というものです。

まさしくその読み方で良いのだと思います。


ただ、過ぎ去りし青春を懐かしみ、もしくは共感し、せつなさを存分に噛み締め、青春に酔ってください。



きっと誰しもが特別な何かを見つけることが出来ると思います。
                          評価    ★★★★★

本日開店です。

小説から科学書、哲学書からエロ本まであらゆる本のレヴューをしていきます。

今後ともごひいきに。